平成29年度 第2回セミナー講師

天草市岩下 龍志さん

就農年
2016年2月
主な作目等
れんこん(露地野菜)/オクラ(施設野菜)/トマト(施設野菜)
農業従事者
本人

非農家出身で学生時代は建築を学び、卒業後約10年間は、東京・沖縄で「花屋」の職を続けていましたが、家族が出来て「子供を田舎で育てたい」、「若い世代や特に子供のたちの世代に今ある技術を伝えて、支えていける仕事をしたい」と考え方が変わったこと、「ものづくりが好き」であったこと、「農業の可能性」等々、農業に転職した理由は沢山あります。

岩下 龍志さんの写真

就農地と現在の経営概要について

就農地は天草市で面積は田50a(自作40a)です(農地中間管理事業利用)。南阿蘇村、阿蘇エコで1年半トマト・イチゴ栽培研修後、同村にて昨年2月ミニトマト栽培で就農するも平成28年4月の熊本地震の影響で南阿蘇での就農を断念、新天地として同県の天草市で平成29年1月に認定新規就農者になり、れんこん栽培を開始しました。

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地域をどうやって決めたのか?

地域に関しては家族の意見が最優先です。最初、僕は研修先が南阿蘇でしたのでそのまま南阿蘇で就農しました。しかし平成28年4月の熊本地震で、とにかく地震がないところ、地震を忘れるところが一番でした。熊本県内で地震の被害がないところが天草でしたので今は天草の西の果て高浜という地域でれんこんを作っています。何が作りたいかというよりも、家族がまず笑顔で過ごせる環境がそこにあるかが決め手です。

今の作目に決めた理由は?

作目に関しては移住する際にもちろんトマトを研修したのでハウス栽培をする予定でしたが、出来なくなり「さて、何を作るか」と悩んでいたときに以前お世話になっていた植木の小松菜農家さんに相談しました。その時に「れんこんが面白いじゃないか」と言われ、近くに田も余っていたのでやってみようと決心しました。ただ作目を決める時に重要視しているのは「適地適作」です。これは研修の時に言われた言葉でその土地にあった野菜作りをするのが一番大事です。

農業技術は何処で研修したか?また、その研修先に決めた理由は?

最初は、南阿蘇の阿蘇エコファーマーズセンターでトマトの先進農家のもとで研修を受けていましたが、天草市に転居してからトマトに代わる作目としてれんこんを作っています。れんこんの収穫や栽培の技術は、熊本市西区のれんこんの農家さんのところに行き、教えていただいています。ただし、熊本市内から高浜までかなり距離があるため今は文明の利器のSNSで状況を報告しながら追肥や消毒のタイミングなどその都度聞いています。

農地の取得・ハウス施設や農業機械、農舎等の資金の確保、調達は?

南阿蘇での農地の取得については、地元の農家さんのお手伝いなど地域の方々と親睦を深め自分の思いを直接伝えて、そこから知り合いの農家さんを紹介していただき農地の取得に至りました。天草に移住してから移住した際に借りた家の修繕をお願いした地元の大工さんの田んぼを貸して頂くことになり、そこかられんこんを作りたい、と色々なところで話していたら、使わなくなった田んぼを使ってくれと言っていただけたり役場の農地担当の方に相談したりしました。早く地元の人たちと仲良くなった方が農地の世話は沢山してもらえると思います。
施設に関しては、露地栽培がメインですので施設代はかかっていません。
農業機械に関しては祖父がおおかた持っていてもう使わないということで譲り受け、機械もほとんどお金がかかっていません。 ただこれから面積が増えるにつれて作業場やトラクターなど大型機械も必要になってくるのでその資金に関しては青年等就農資金から借り入れる予定をしています。

最初に用意した資金はいくら?経営開始する際に資金相談した場所は?

100万程度は用意したとは思いますが就農したばかりで、給付金は受給していますが家族を抱えてとなるとなかなかきびしいので嫁にも働いてもらいながらなんとかやっています。 いろいろな農家さんに相談した際に初めての作物であるので失敗の可能性もあるので、初めから資金を投資するのを控えて今ある中ででるかぎり頑張っていこうと考えました。資金の相談は役場の農政課の担当の方にしています。

販売について

今はJA出荷と産直販売です。天草は観光地であるので産直は結構な収入源になっていますが、やはり価格競争はどこでもあります。そこで、他の農家さんが作らない品目や時期も考えて出荷しないといけないと感じています。

就農前と就農後においての販売方法の考え方が変わったか? 変わったならその理由は?

販売方法についてはネット販売など考えていましたが、今は「良いもの」を作ってお客さんに直接届ける方法を模索しています。農協出荷や市場出荷も農家にとって良いのですが、一生懸命作ったものを食べて「美味しい」と直接言われるとやる気も変わってきます。お客さんの笑顔が僕にとっての肥料になりますから農家のモチベーションにも関わってくる問題だと思っています。

現在の販売方法でいい点、悪い点は?今後どうしようと思っているか?

産直は売れ残ったりするので、反応がダイレクトにわかります。一方、市場出荷などは出荷してしまえば一応買い取ってくれるので売れ残ることはないのが良い点です。様々な農家がいるので出荷先も多種多様であっていいと思います。
今後は、加工品の販売と収穫体験などで子供が土いじりが出来る環境を増やしていきたいと思っています。

作っている農作物の課題・苦労している事や農業をしてよかった点について

分からない時はその都度聞いています。ただ周りにれんこんを作っている農家がいないですし、れんこんという作目は種苗会社があるわけでもなく指導員もいないので栽培技術の向上は経験しかありません。独りで、一年で作れるれんこんの量は決まっています。そのため、技術の進歩は遅いです。でも、なんとしても今年成功させて、周りに「れんこんを作りたい」と思わせて、一人でも多くのれんこん農家を増やしていければと思います。そうなれば技術のスピードも格段に上がると思います。ただ、守りに入っていては道が開いていかないと思っていますので、できる範囲で肥料の配分や水管理でいろんなチャレンジをしていきたいと思います。

就農してよかったと思える事。やっていて良かったと思える事、苦労している事。

「良かったなぁ」と思うことは家族の時間が増えたことです。地域の方々もとても良くしてくれています。苦労する点は、毎年気候や気温が変わっていますので「栽培」でずっと苦労していくものだと思っています。ただ、その苦労の部分がやっていてよかったと思える日がいつかくるのかなと思って頑張っています。

今後の目標について

個人の目標では 5年のうちには3haまで規模拡大していきたいと思っています。
それと僕たち家族を温かく迎えてくれたこの町に日々何か恩返しをできればと考えて、地域の過疎化、耕作放棄地も増えていますのでその歯止めとなるべく、研修機関を作って若い世代の農家を増やしていき、様々なアイデアを用いて地域の活性化につながるようなことができれば幸いです。農業が子供達の「なりたい職業」、「憧れる職業」までに上げていけたらと思っています。

新規就農を目指す人へのアドバイス

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僕は農業を通して子供達を笑顔にできればと思っています。これが僕の仕事だと思っています。「やりたい農業」や「田舎暮らしがしたい」とかいろんな意見があると思いますが、皆さんにとって幸せと感じることが農業と直結していれば間違いなく成功すると確信しています。「稼ぎたい」という動機もありだと思います。思いがあれば、誰でもできるのが農業です。